レトルトカレーを
鍋で茹でようとして
「…おまえ、そんなモンしか
作れないのか?」
少年Aが私の手元を
覗きこむ。
「オンナなんだから
手早く作れる料理くらい
2、3持っとけよな」
なんてエラソーに。
「まだ買い物、行ってないし」
「肉も野菜も揃ってるじゃんか」
勝手に冷蔵庫を開けては
食材をチェックしている。
「おまえ、食材を見る目は
確かじゃん」
カレーの具材に
なりそうなモノを
ピックアップしながら
私のアタマを
食材で小突いてきた。
「それ、ここの部屋の
持ち主のモノだから」
「え?
このマンション
おまえの家じゃないのか?」
「従兄のお兄ちゃんの…」
留守宅を任されてるって
コトバを焦って飲み込む。
「だから
もうすぐお兄ちゃん達が
帰ってくるんだから!」
我ながらナイスアイデアだと
思った。
お兄ちゃん達って
複数形にしたトコロが
我ながら賢いって
自己陶酔する。
なのに
「だったらその
お兄ちゃん達とやらも
俺につきあって貰うまでさ」
「お兄ちゃん達は
空手やってて
山のようにデカくって
熊のように凶暴なんだからッッ」
「……」
「……」
やっぱり
この設定には無理があったか。
「…おまえ
嘘つくのヘタだなあ」
って。
少年Aが初めて笑った。
…かわいい。
なんて思ってしまった私は
どうかしている。