「そうよ!

電話聴いてたんでしょ?
今夜は私ひとりっきりよ」


「だから?」

少年Aは血が滴ってる
自分の左手を押さえながら
冷やかに答える。


え?

少年Aから身を解放されて

切りつけられたのが
自分ではなく

少年A自身のカラダだったと

初めてわかった。


「何やってんの!!」

信じられない!!!!!!

自分のカラダを
切り刻んでみせる犯人なんて

ありえないでしょ!


「怪我なんかしたら
逃亡するときだって
不利でしょうが!!!」


「…逃げ回る気なんかねえよ。

言っただろ?

3日経ったら
ちゃんと出頭する」


「どうしてすぐじゃないの?」

こうして逃げ回ってるうちに
捕まってしまったら
罪だって重くなる。


「おまえがおとなしく
していてくれたら
捕まったりしねえよ」


スナックでも偽名に偽住所に
歳だって誤魔化してたから


「すぐには身元が
バレたりするもんか」


なんて強気で。


意外と子どもなんだなって
ちょっと安心した。


私は傍にあったティッシュで
少年Aの傷口を押さえながら

「絆創膏あるよ」

テレビ台の下にあった
救急箱を指す。


「舐めときゃ
そのうち止まる」

「カーペット汚されると
お兄ちゃんに怒られるから」


強引に治療した。