「感謝してもしきれない」


「…だったらなおさらだよ。

その婚約者とか家族に
相談すべきだよ。

弁護士さんなんでしょ?」


「そんなコトして
アネキの耳にでも入ったら」

例え相手が許してくれたって
お姉さんは一生
お嫁になんて
いかないだろうって。


「今、俺が捕まるワケには
いかないんだ」


それじゃ

「お姉さんの為に…」

逃げ回って…。


「苦労ばっかり
かけちまってきたから

アネキにはしあわせに
なって欲しかったんだけど」


どこまでも
お姉さんの足を
引っ張らずにはいられなかった

なんて。


少年Aがちいさく見えた。


「…あなたの気持ち
わかるけど」

「わかる?」

わかるなんて
よく簡単に言えるなって
キレイな顔で睨んでくる。


「オヤジとオフクロが
死んじまってからは
アネキは苦労ばっかしてて」

高校入るまでは
結婚しないなんて
意地はって
バカ言って

「もう30だぜ?」


少年Aが自嘲する。


「俺、頑張って高校に入って
やっと嫁に
いけるっていうのにさ」


また自分のせいで
迷惑をかけてしまうって。

「せめて式ぐらい…」


その横顔があまりにも
無防備で


思わず抱きしめてしまった。