気がつくと
私はコウに自分から
キスしていて。


「大好きなヒトとって
ずっと決めたから!!!」


そう叫んで
自転車のペダルを踏んで

力の限り加速した。


見慣れたハズの
通学路が

見たコトもないくらいの速さで
私の視界に入っては
次々と消えてゆく。


涙で滲むヒマもなく。


自転車がスリップして
天地が引っくり返って


そのときに見た
空の青さは
今も覚えてる。


聞きなれたコウの怒声が
私のアタマの中で
何度も何度もリピートして。


「あ…」
「気がついたか」


私は自分がコウの腕の中に
保護されてるんだって
気づくのに

そんなに時間はかからなかった。


「アタマは打ってないか?」
「…たぶん」

「……」
「……」


どんな顔したらいいのか
わからない。


コウは泥だらけになっていた
私の顔を指で拭きながら


「ご愁傷様。

おまえのファーストキスなんて

とっくの昔に
俺が戴いてたから」


え?


「おまえ、ホントに鈍感でさ」


幼稚園にはじまって
小学生のときも


「おまえとマクラを並べて
眠るチャンスがあったときは

俺、おまえが熟睡してるのを
確認して

いっつも
この唇にキスしてたから」


コウはそう白状して
私の唇を自分の指で
なぞった、


「俺のコト
好きになって
くれますようにって」

そんな風に願いながら

祈るようにキスしてた。


「知らなかっただろ」

って

コウは気まずそうに笑う。


「だけどさ。
ある日、おまえのオフクロに
目撃されて」