翌朝
昨日あれだけ
不機嫌だったから
今日は迎えには
来てくれないだろうなって
覚悟していたのに。
「…何モタモタしてんだよ。
置いてくぞ」
なんて。
目は合わせて
貰えなかったけど
口調はいつものコウで
ちょっと安心した。
いつものように
自転車でふたり
並走する。
信号待ちにイラつきながら
コウは私に
「受けたくない仕事なら
断っちまえよ」
そう吐き捨てたかと
思ったら
私のリアクションを
確認もせず
青信号を
ひとり疾走していった。
え…。
「ちょっと待ってよ!」
コウの名前を呼びながら
その背中を追いかける。
心配してくれてたのかな。
気にしてくれてたんだ。
そう思ったら
何だかどんどん
嬉しくなってきて。
「コウってば!」
ついついその背中に
明るく声を
かけてしまっている自分に
私は気づかなかった。
コウの自転車が停まって。
コウがゆっくりと
こっちを振り返える。
その瞳が
コワイくらいキツくって
コウの怒りが
伝わってきた。
「マジで心配してたんだけど」
隣りに並んで停まった
私を睨みつける。
「知らないオトコと
キスするのなんて
仕事だったら
割りきれちゃうんだ?」
コウの毒舌が
止まらない。