「オトコに媚売ってさ。

おまえのやってる仕事って
何なんだよ」


「……」

「そんなにオトコの
注目を浴びたいのなら

何でもすればいい」


何ひとつ
言い返せなかった。


そもそもこの仕事だって
道筋をつけたのが

コウのお母さん
だったから

コウのお母さんの
期待に応えたくって
頑張っただけなのに。


コウのお母さんじゃ
なかったら

オーディションにだって
行ってないし

こんな仕事だって
始めたりはしなかった。


キレイになろうって
努力したのも

仕事を頑張ったのも


皆、ただコウに
振り向いて欲しかったから。


なのに。

アタマの中では
いろんなコトバが
浮かぶのに

どれひとつ
口からは出てはくれなくて。


涙がでた。


鳴くなんて
オンナはズルイって

もっとコウの機嫌を
損ねるのはわかっていたけれど。


泣いちゃいけないって
焦れば焦るほど

涙はとまらなくなる。


「…バカなヤツ」


泣くくらいなら

大義名分も思いつけない
くらいなら

最初から仕事なんて
引き受けるんじゃないって


私のアタマを
容赦なく叩き続ける。


ちいさいときから
乱暴なトコロは
変わってないね。

だけど

チカラをちゃんと
加減しながら叩くように
なったのは

いつからだったろう。


「俺が泣かしたみたいで
気分悪いから
いい加減泣き止め」


私の頬の涙を
自分の掌で
乱暴にぬぐい取って

仕上げに
自分の制服の袖口で
ぐしぐしと
拭きとるモノだから。


「…おまえメイクしない方が
ぜって〜いいよ」


アイメイクがはげ落ちて。