「カエデさん♪」

相変わらず鈴のような声で
私に馴れ馴れしく
話しかけてくる。


「フカザワ先輩の…」


尋ねてもいないのに
今日は産科の検診で、とか

私の神経を逆なでするような
話題ばかり持ち出して
きたりするモンだから

「学校はどうしてるの?」

なんて

意地悪な質問をしてしまう。


「私、バカだから。

勉強嫌いだから
高校受験しなかったの」

掛け算もまともに出来ない
なんて

かわいい声で
明るく答えてみせる。


「…学校もいかずに
毎日何してるの?」

「バイトしたり〜。
公園でぼお〜っとしてたり」


…って。

フカザワ先輩って
オンナの趣味
悪すぎだよおおおお。


学校も行ってない
フリーター。

絶対にまともじゃないよ。


なのに
どこでどういう風に
エリートサッカー選手が
こういうタイプと
知り合えたりしたんだ。


「昨日のあの店で
モーニングの時間だけ
働いてるの」

毎朝、朝食を食べに来ていた
フカザワ先輩と
顔見知りになって

つきあうようになったと
さらりと教えてくれる。


…舌足らずな口調が
幼さを強調して


本当にこんな少女が
オトコと同棲していて

お腹に赤ちゃんが
いるなんて

…実感が湧かなかった。