でも
たくさんの荷物の
ほとんどが食料品で

凄く所帯じみていて。

「病院の近くに
激安店があって」

重そうな牛乳や
ジャガイモが
エコバッグの中から
覗いていて。


「…妊婦さんって
重いモノを持っちゃ
ダメなんじゃないの?」

「あ、そうなんですか!?」


私のひと言に
蒼くなっている。

…そんなコトすら
教えてくれるヒトも
周りにはいないのか。


「お母さんとか
赤ちゃんのコト
知ってるの?」

「……」

その幼い少女の
なつっこいおしゃべりが
初めて止まった。


「…ウチ
お母さんいないから」


少女がちいさく笑った。


何か物凄く悪いコトを
訊いてしまった気がして

「あ、よかったら
荷物持ったげようか」

なんて

いらぬお節介を焼いてしまう。


「いいんですか!」


わあって
本当に嬉しそうに笑って

こっちがびっくりした。


…家出中なんだよね。


こんなに簡単に
住んでるトコロとか
明かしてもいいのかな。


とは
思ったけれど。


同棲してる部屋って
どんなカンジなんだろうって
好奇心が勝ってしまって

そのコトバは
ぐっと飲み込んだ。