そこは駅のガード下で

電車が通る度に
揺れるような
真っ暗な光の当たらない
6畳一間のアパートで。


このかわいい少女には
そぐわない

ううん。

フカザワ先輩のイメージからも
想像がつかないような

下水道の匂いがする
部屋だった。


ネズミとかゴキブリとか
出てきてもおかしくはない。


真っ昼間から
酔っ払いが
転がっていて

ちょっと恐かった。



腐れ落ちそうな
鉄の階段を
カンカンと軽やかに
鳴らしながら

少女は2階の部屋に
私を招き入れる。


中に入ってみると
そこは乙女の世界で。

ピンク地に白の水玉の
カーテンが
古い窓枠から
すごく浮いていた。

出されたお茶も
ネコキャラクターがついた
プラスチックのコップに
入っていて

まるで
おママゴトをしているような
錯覚を覚えた。

「百円ショップで揃えたの」

自慢のテーブルも
どうみても子ども用で。


…フカザワ先輩
大丈夫かな。


本気で心配した。


「この部屋に他の誰かを
入れるのは初めてだから」

凄く嬉しいって

無邪気に喜んでいる天使は


「ゴハン食べっていってね」


なんて。

私はすっかりおママゴトの
上客と化している。