「今日はお鍋なの」

不器用そうに白菜を切る
その手は
危なっかしくて。

「貸して」

見ていられなかった。


切れない包丁。

「百円ショップで買ったから」

なんて言い訳する天使に

「お皿の底で
砥げばいいんだよ」

なんて知ったかぶりする。


「すご〜おおい♪」

こんなコトにまで
目をくりくりさせて
感激している素直さに

ちょっと劣等感を感じた。



…フカザワ先輩は
このコのこういう
素直さとか
正直さに

癒されているんだろうなって。


私にないモノ

私が欲しいモノ



全てを持っている少女。


…羨ましいくって

妬ましかった。


「ジャガイモは
お鍋には
入れないんじゃないかな?」

横でピューラーを使って
ジャガイモの皮を
剥いていた少女に
私は嫌味っぽくツッコんでいる。


「そうなの?
ひろちゃん
いつもおいしいって
残さず食べてくれてたから」

焦る姿もかわいい

超天然の天使だった。



「…フカザワ先輩と
いっしょに暮らしてて楽しい?」

「うん。

ふたりでいれば
何だってへーき」


愚問だった。

私だってフカザワ先輩と
いっしょに暮らせたら…


…キュン死してるよね。