「ゆうちゃんに出逢うまで
私ってずっと
ひとりぼっちだったから」


父親と二人暮らしで

その父親もいつも
家に違うオンナのヒト
連れてきてて


「オンナのヒト達が
帰るまで
ずっと公園で時間を
潰してるしかなくて」


いつも公園で
鳩に給食の残りを
与えたりして
過ごしてたんだと

天使が初めて
哀しげな顔を見せた。


「私もゆうちゃんも
ひとりっ子だったから

たくさん子ども欲しいなあ。

でもって
ひろくんに教えて貰って
皆でお庭でサッカーするの!」


「へえ…」


夢見る夢子ちゃん。


全然、現実が見えてない。

こんな貧乏してて
庭つきの家なんて。


アンタのせいで
フカザワ先輩は
高校だって中退で

あんな店でアルバイトして
食いつないでるっていうのに。


子どもだって
産むのにも育てるにも
それ相応の
お金がかかるのに


何でそんなに
悠然と夢を語ってみせるコトが
出来るんだ!



何だか腹立たしくなってきた。

この浮世離れしたお嬢さまに
現実を教えたくなる。


なのに

「今夜はケータくんも
ゴハン食べにウチに来るって
ゆうちゃんが言ってたから。

たくさん材料用意しなくちゃ。

ケータくんってやっぱり
よく食べるんでしょ?」


って。

「ケータが?」

ここに?


来るうううううう!!!!!?

冗談じゃない!

私がこんなトコロに
ずうずうしく
上がり込んでるって
知られたら

何を言われるか
わからないッ!!!!!!


大慌てでカバンを持って
玄関のドアに手をかける。


ガチャ。

え…。

私よりひと呼吸早く
ドアノブが動いて


「ケロ!?」


コトもあろうか
ケータとフカザワ先輩に
鉢合わせする。


「…おまえ何で
こんなトコロにいるんだよ」