「待って、カエデさん。
忘れモノ!」
階段をカンカンと小走りに
天使が降りてきた。
「階段はゆっくり
降りなきゃダメだって
いつも言ってるだろう」
「ソウデシタ♪」
先輩に叱られて
舌を出す天使のしぐさの
かわいいコト…。
「カエデさん。ハンカチ♪」
「…あ、ありがとう」
「かわいいハンカチですよね。
私もそんなの欲しいな」
そのハンカチは
端っこに
ネコが引っ掛かってて
ちょっと不思議なデザインで
色違いを揃えているくらい
実は私の
今一番のお気に入りだった。
「コレ?
今、学校で流行ってるんだ。
学校の傍の雑貨屋さん
なんだけど
先輩に買って貰うといいよ」
深い意味はなく
答えたつもりだったんだけど。
「…おまえさあ。
簡単に買えばなんて
言ってんじゃないよ」
信号待ちのとき
バイクの上で
ケータに注意される。
「あの生活見てたら
フカザワ先輩達が
どんだけ生活を
切りつめているのか
わかるだろう?」
「…だって。
ハンカチなんて
安いモノだし…」
「おまえと経済感覚を
いっしょにするな!」
…ムカついた。
自分だって
免許なんか取って
バイクなんか乗り回して
ケータイを渡すなんて
太っ腹なコトをしてるけど
「私に借金してるの
忘れてないわよね!!」
「飛ばすぞ!」
私のセリフを
聞いてないフリをして
ケータは
乱暴にバイクを発進させる。
「ぎゃあああああ」
恐くて思わず
ケータの背中にしがみ付いた。
どこが意外と安全運転、よ!
ケータの背中から
ケータの笑い声が
伝わってくる。
くっそ〜!
私が怖がるのを
面白がってる!
「ケロってさ。
案外、恐がりなのな〜♪」
わざとジグザグに走ったりして
…コイツ、絶対コロス!!