「な、何!?」
「おまえ、今いくら
持ってる?」
「五千円、くらい、かなッ」
「それ全部貸してくれ」
なッ、にいいいいいい!?
借金の申し込みかいッ!
「アンタ
私にいくら借りれば
気が済むのよ!!」
「フカザワ先輩達が
タイヘンなんだよ!!!!」
「えッ?」
それは突然の出来事で
「先輩のバイト先がバレて
警察がふたりを
探しに来たって…」
ケータのマジな目が
それが嘘や
からかいではないって
すぐにわかった。
「バイト先のオーナーが
機転を利かせて
うまく先輩を逃がしてくれた
らしいんだけど」
警察の話では
フカザワ先輩が
未成年のオンナノコを
拉致監禁してるんだって
コトになっていて
「お互い同意の元の
同棲じゃ…」
「そんな言い訳を
聴いて貰える雰囲気では
なさそうでさ」
そんな…!
「で、俺
フカザワ先輩達を
遠くに逃がして
やろうと思うんだけど
おまえくらいしか
協力してくれそうなの
思い浮かばなくって」
確かに
サッカー部の部員なんか
巻きこんだら
タイヘンなコトになる。
って。
「アンタだって
サッカー部員じゃないの!!」
「今、退部届だしてきたから」
「は!?」
呆れてしまう。
何を考えているんだ!
いくらサッカー人生の恩人で
尊敬する先輩でも
その為に
大事なサッカーを
犠牲にするなんて
本末転倒も甚だしいよ!!!
「おまえは
彼女の居所も
顔も知っているし。
おまえしか
頼めるヤツはいないんだ」
そんなコト言われても…。
「時間がないんだ」
ケータは私の返事を待たずに
私をバイクに乗っけて
「安全運転するから」
マジな顔で約束する。
「相手のお父さんとか
ちゃんと話しあって
説得した方がいいよ。
おおきなお腹をかかえて
逃げたって
いつまでも
逃げ切れるモノじゃないよ」
「…話し合いなんかに
応じる親ならな」
「何よ、それ!」
意味ありげな言い方で。
ケータは口をつぐんだ。