「…どうして
今になって弱音なんか
吐くのよ!」
先輩はサッカーを捨てて
家族を捨てて
仲間を捨てて
全てを犠牲にして
頑張ってきたのに!!
「学歴や育った家庭なんて
カンケイないよ!
大切なのはお互いの
気持ちでしょう!」
フカザワ先輩が選んだのは
他ならないアナタで
「ふたりが信じ合っていれば
それで充分じゃない」
ふたりでいれば
何でもへーきって
言ってたのは
アナタだ。
なのに…。
「…ホントは
こんなカンケイ
すぐに壊れるって
壊れてしまえって思ったけど」
それでも
「羨ましくて
しかたなかったんだから!」
いっしょに逃げようって
手を差し伸べてくれる
しあわせを
「自分から捨てるなんて
本当のおバカさんだよ!」
気がつけば
私の方が大泣きしていて。
「…ありがと…う」
私は天使に抱きしめられる。
「誰かが私ののコトを
自分のコトのように
一生懸命考えて
泣いてくれるなんて
ひろちゃんしかいないと
思ってたから」
それは違うよ。
「ひろちゃんと
離れ離れになったら
もう一生ひとりぼっちだって
思ってた」
フカザワ先輩みたいな
人間なんて
どこにもいないんだから。
「自分のコトなのに
逃げるコトばっかり考えてて。
世の中、まだまだ
私が出会ったコトのないような
素敵なヒトがたくさんいて」
そう言って
私を優しく見つめる目は
聖母のように
清らかで
まぶしかった。
「…しっかり考えなくちゃ。
アタマ悪くたって
お腹の中の赤ちゃんを
守ってあげられるのは
私しかいないもん」
「…そうだよ」
ココロにもないコトを
口にして
私の方がこのコなんかより
よっぽど
おバカさんだった。