「…急ごう。ケロ」

ケータに促され
立ち上がる。


「先輩、これ!」

ケータが先輩に
封筒を渡して

「いくぞ、ケロ!」

私の手を取って
外に飛び出した。


「ケータさっきの…」

お金が入ってるように見えた。


「悪いな。
おまえの借金返すの
もっと先になりそうだ」

って

「アンタね〜!!!!!!」

「しいッ!」


ケータが私の肩を抱き寄せて
その手で口を塞いだ。


「さっきの警官だ」


ケータのひと言に
カラダが固まった。


…本当にこんなコト
上手く行くんだろうか。


「少し引きつけておいて
俺が合図したら走るぞ」


どきどきしながら
ふたり

発車間近の列車の
ホームの端を歩く。


前後から
警察官が私達を少しずつ
包囲していくのがわかって

すごく恐くなった。


「大丈夫だから
ぜって〜上手くいくから。

俺を信じろ」


なんて

何を根拠にそんな
大口が叩けるんだ。


普段の素行を知ってるが故に
不安なのがわからんのか!!


私の肩を抱いていた
ケータの手に力が入る。


列車の発車ベルと同時に

「走るぞ!」

ケータは私の手を引っ張って
列車に乗り込んだ。


うっそー!!!!!!

こんなズサンな作戦
信じられない!!!!!!


ケータは列車の中の
トイレに私を連れ込むと

カシャンと
カギをかけてしまった。