列車の中のちいさなトイレ。

ふたり入ったら
いっぱいいっぱいで


「絶対、ふりきれてないと
思うんだけど」

「たぶんね。
何人かの警官が
この列車に
乗り込めたと思うよ」


「列車も発車したし。

もう別人でしたって
タネあかししても
いいんじゃない?」

ふたりっきりの空間で

こうやってぴったりと
いつまでもくっついて
いるなんて

あまりにも気づまりだ。


「ダメだ。

今バラしたら
駅に連絡がいって

他の警官に先輩達が
取り押さえられる」


ふたりの乗った新幹線が
目的地に着くまでは
安心できないって

ケータは私の顔を見た。


「……」
「……」

気まずい。

顔が近すぎだよ。



何か
何か会話を…。


「フカザワ先輩って
もっと違うイメージの
ヒトかと思ってた」

「王子さまでなくて
残念だったか」

「ちょっとね」

「俺は好きだけどね。

今回のコトで
もっと好きになった」

「…幻滅しなかった?」

「え?」

「その…。

あんな子どもみたいな
オンナノコに手を出して
妊娠させて

オトコ同志ってそうゆ〜の
ありなのかな、って」


「……」

ケータの顔が曇った。


「おまえ、痛いトコ
突いてくんのな」


ケータはちょっと笑って

「ケロは秘密が
守れるヤツだよな」


「…まあ。場合に
よりけりだけど」


「…俺が今から話すコト
誰かに話したら

俺、お前のコト
殺して俺も死ぬから」


え…。


ケータの目が
いつになく恐くって

「嫌だッ!
そんな告白聞きたくないッ!」

自分の耳を必死で
塞いだ。


のに


「お腹の中の赤ちゃん。
先輩の子どもじゃないんだ」


「…え?」