聞きたくないと
耳を塞いでおいて

聞き返すのもおかしな話
だったけど


あまりにも意外すぎる
ケータの告白に
わが耳を疑った。


「最初はさ。

毎日、カラダ中にアザを
作ってくるオンナノコに
同情して

力になってた
らしいんだよね」


天使の父親は酒乱で

お酒が入ると暴力が
止まらなくなるという。


酒の勢いで受けた
暴力の結果が
お腹の子どもで


「家に戻って
お腹の子がいるコトが
わかったら

何をされるか
わからないからね」


カラダが震えた。


「中絶するコトも考えて
ふたりで病院まで
行ったんだってさ」


でも何も事情を知らない
病院側から

命の大切さなんかを
切々と説かれて

「彼女はひとりで産む
決心をしたんだ」


天使はそれ以来
先輩の前に姿を見せなくなって

「気がつくと
いない彼女の姿ばかりを
探してしまっていて」

そのとき
先輩は天使のコトを


「愛してるんだって
強く意識したんだってさ」


どんな逆境にも
笑顔を絶やさない少女。


私は

世間知らずのお嬢さんの
おママゴトと
私はバカにして。


涙が止まらない。


「先輩、おまえにも
すごく感謝してた。

だからおまえには
この話をしてもいいって…」


そんなコトを言われても。


そんなおおきすぎる秘密を
打ち明けられたって…。


「俺、ひとりで
この秘密を抱え込んでいける
自信なんてなかったから」

なんて

勝手な言い分で。


ケータは私の涙を
その指で拭った。