ど、どうしよう。

この場合
オンナの私が
何か答えた方がいいのかな。


ケータが
私の肩を叩いて

壁に指文字を書き始めた。


「…大丈夫です」

ケータの指示通り
ドアの向こうにいる
車掌さんに声をかける。


「おひとりじゃ
ないんですよね?」

ドアの向こうで
今度は違うオトコのヒトの
声がする。


警察だあああああ!!!!!


ケータはまた壁に

《作戦成功》

って。


自分達のコト
先輩達と勘違いしてくれてる

って。


親指を立ててみせる。


自分の腕時計で
時間を確認して

今度は私を壁際に
追い詰めて

「時間稼ぎしなくちゃ」


笑った。


こうして真正面からみると
ケータってけっこう
好みの顔してる。


そうだ。

我が家のネコに
ちょっと似てるんだ。


どこか
放っておけないでいたのは

構いたくなってしまうのは


受け入れてしまうのは


きっとそのせいなんだって。


私は理由をこじつけて。


またケータからのキスを
受け入れていた。


「俺、この夏休みに
アメリカでヒザの手術を
受けるんだ」

本格的にサッカーに
復帰できるかもって

ケータが耳打ちする。


「そんなコトになったら
もう補欠くんって
からかえなくなるよ」

って

私の辛口な返答に

「ぜって〜俺
おまえの為に
レギュラー獲るから」


なんて。


今度は私にリアクションを
させないように

すかさず
私の唇を塞いだ。


妊婦さんの洋服は
スキだらけで


ケータの手の
侵入をあっさりと
許してしまう。


「サッカーって
手を使ったら
ルール違反じゃないの?」

「…レッドカード
出すなら止めるけど」


ふたり笑った。


サッカーの

「ルールなんか
知らないもん」


気がつくと
今度は私の方から
キスしてた。