「そんなコト
俺、言ったけか?」
「言いましたッ!」
「フカザワ先輩じゃなくて
他の先輩だったかも」
「もお!
いい加減なんだからッ!!」
憎ったらしいケータの耳を
思い切り
引っ張ってやった。
「いでででで〜!!!!!」
ケータがわざとらしく
おおきな声をあげる。
振り返った
フカザワ先輩が
「仲がいいんだね」
なんて。
私の心臓をひと突きした。
「ひろちゃん、どうしたの?」
鈴のようなかわいい声が
フカザワ先輩を呼ぶ。
茶色がかったくりくりの
長い髪。
広いオデコが幼いその少女は
フカザワ先輩の背中に
貼りつくようにして
こっちに笑顔を向けてきた。
「あ、俺の彼女。
今いっしょに暮らしてて
結婚するんだ」
「えええええ!????」
ケータとふたり
大声で叫んでしまう。
「…けっ結婚するって…」
「うん。この冬に
子どもも生まれるし」
「子どもおおおおお!???」
ホール中に声が響いて
ケータとふたり
お互いの口を塞ぎ合った。
「俺も18で
コイツもまだ15だから
籍はまだ入れらんないけど」
って。
フカザワ先輩は
その少女と
みつめ合ったりして。
「ひろちゃんのお友達?」
「サッカー部の
後輩のケータと
そのただの彼女の
ケロちゃん」
「…私はコヤツの
彼女ではありませんし
名前もカエルではなく
カエデです…」
否定文にも力なく…。
「カエデさんって
キレイな名前ですね」
自分もカエデさんって
呼んでもいいですか、なんて
憎たらしいくらい
かわいいコで。
そのお腹を庇うような
何気ない仕草に
嫉妬を覚えた。