帰り道。


「おまえ、フカザワ先輩のコト

ベラベラ
しゃべるんじゃないぞ」


夕暮れの街
人混みをさけながら
ケータはどんどん
先を歩いてく。

補欠とはいえ
さすがサッカーを
やってるだけあって

簡単に2人抜き
3人抜きをしていって。


私はさっきから
ヒトにぶつかっては
謝ってばかりで。

何だか泣きたくなってきた。


大好きなフカザワ先輩が
こんなコトになって
いたなんて。


サッカーを捨ててまで
大切にしたいオンナノコ。


そんなモノが
この世に存在していたなんて
想像したくもない。


フカザワ先輩は
皆のモノで

カッコよくて

王子様みたいで。


少なくても
あんな汚いヒゲオトコじゃ
なかったのに。


あんなに素敵だった先輩を
ここまで貶めてしまう
オンナなんて

いくら可愛くたって
ロクなモンじゃないよ。


子どもなんか作って
何考えてるんだ。

きっとヒトのいい
フカザワ先輩を
騙くらかして

わざと作って
結婚を迫ったに決まってる。


「オトコなんて
皆バカなんだから」


裏切られた思いで
いっぱいになった。


「おい、そんなトコで
立ち止ってんじゃねえぞ」

気がつくと
ケータがいつのまにか
正面に立っていて。

視界に空色のスニーカーが
入ってきた。


「そのスニーカー
フカザワ先輩と
いっしょなんだね」

「あ、ああ。コレ?
フカザワ先輩に貰ったんだ」

「ふ〜ん」

「ヒザに優しい靴だからって」

「ふ〜ん」

そんなのたいして
興味なんてなかったけれど


今、自分の顔が
涙でぐちゃぐちゃなのは
自覚していたから

顔を上げられない。


「…大好きな
尊敬する先輩だったから

俺だってショックだったよ。


サッカーより
大事なモノがあるなんてさ」


「…うん」

ケータが私の背中を押した。