言えない夜の過ごし方

先週
おかーさんがおとーさんと
リコンした。

住み慣れた
都会のマンションも
売り払って

おととい
おかーさんとふたり
おかーさんの田舎に
引っ越してきた。


都会のマンションには
嫌な思い出だらけ
だったから

気分一新

おかーさんとふたり
頑張るつもり
だったのだけど。


おかーさんは毎日
朝早くから
夜遅くまで
仕事を
3つも掛け持ちして

ほとんど
ウチにいるコトはなくなった。


「どうして
こんな夏休み直前に
引っ越してきたの?」

「誰か芸能人
遇ったコトある?」

「お母さん
駅前のスナックで
働いてるんだって〜?」

「お父さん
ギャンブルで借金
凄かったって本当?」

「そのショートカット
都会で流行ってるの?」



転校先の高校も
都会の学校とは

あらゆるモノの
レベルも価値観も
違っていて

馴染めそうにない。


それでも


「よっくわかんないや〜♪」

おどけてみせたりする
自分だった。


好奇の目。

昨日は転校初日だったから
仕方ないってわかってる。

でも

都会での
家族3人の暮らしは

もう忘れたいコトだったし

消し去りたい過去だった。


おとーさんは
事実上のリストラで
公務員をクビになって

決まっていた次の就職先も

「俺のいるトコロじゃない」

そう言って3日も
持たずに辞めてきて。


就職活動に
明け暮れる日々は
おとーさんを
別の人格にして

気がつくと
競艇に競馬に競輪に
退職金も失業保険も皆
つぎ込んでしまっていた。


家には毎日のように
借金取りが
押しかけてきてて

ご近所の目が痛かった。


後半は
離婚届を残して
姿を消してしまった
おとーさんの代わりに

借金取りが
私の学校にまで
来るようになってきて。


おかーさんも
さすがに
リコンを決意したのだが。


蒸発して2年も
よくひとりで頑張ったと思う。


だから
おかーさんが

「離婚してもいいかな?」

申し訳なさそうに
私なんかに
アタマを下げてきたときは

いたたまれなかった。