「あ、実は昔、女優をしてて。
この村のヒトには
内緒だからね」
なんて
とっさにしては
上出来な言い訳で。
「…いろいろワケありだから」
こう言ってたら
私の家庭の事情にも
突っ込んでくる心配も
以前、同じマンションに
住んでいたなんて
知られるコトもないだろう。
「マーガレットが
現れそうなのって
この辺りが怪しいんだよね」
飼い主は
どこで手に入れたのか
この周辺の地図を
広げてみせた。
土地の状況も
地形の特徴も
手書きで
事細かに書き込んであって。
もしかして
「昨夜、一晩中
こんなモノ作ってたとか?」
「何かしてないと
気が狂いそうだったから」
って。
そんな哀しい目を
しないでよ〜。
ああ、いかん!
ここはココロを
鬼にせねばッ!!
「まずは港を
捜索しようと思うんだけど」
車のトランクに
積んできたらしい自転車を
飼い主は乱暴に扱っている。
さりげなく
高級外車と同じブランドの
ロゴが入ってて。
「ゴーストライターって
儲かるんだ?」
失礼なコトを
口走ってしまった。