「儲かるよ」
イヤミなくさらりと
当然でしょと言わんばかりで。
「自分の名前で出せば
もっと儲かるように
なるんじゃないの?」
「なんないよ。
ネームバリューのある
アーティストの作品だから
お金をかけて
宣伝もして貰えるし
ラジオやテレビだって
ちやほや扱って貰えるんだ」
どんないい作品だって
ヒトの耳に触れないと
知っても貰えない。
「手売りやクチコミなんて
たかがしれてる」
そんなコトも
わかんないのかって
バカにした目で
こっちを見た。
「…マーガレットさんの
飼い主さんは
オトナでいらっしゃるから」
「その妙な言い回し
やめてくれる?
サトルでいいよ」
「それ本名?」
「俺、芸能人じゃないし」
ゴーストライターに
ペンネームなんて
必要なかった。
「私は…」
「みゅ〜、だろ?
オフクロさんがそう
ばあちゃんに話しかけてた。
洒落た名前だな」
って
初めて笑った。
…笑った顔が
どこか幼い。
「サトルって今いくつ?」
「18。もうすぐ19」
え。
1コ上!?
そんな若くして
儲かってるなんて
どんだけ才能
有り余ってるんだあああ。
そうだ。
カードだって
ゴールド飛び越して
プラチナだったし。
家族カードとかじゃ
ないんだよね。
しかも
ネコなんか
こんな田舎にまで
追っかけてくる
ゆとりある生活なんて
凄い羨ましいぞおおおお。