こんなに恵まれているのに

この上
ごろ〜まるまで
手に入れようなんて

何だか凄く
ズルくないか???


高級自転車で
先を走る
そのヒトの後姿に

嫉妬を覚える。


私なんか
借金地獄で
家族がバラバラになって

何もかも捨てて
こんな田舎で

明日も見えず


将来も見えず…。


ああ、いかん。

どんどん卑屈になっている!!


思いっきりペダルを漕いで
前を走っていた
サトルを抜き去った。


人生なんて
何が起こるか
わからない。


頑張って
ペダルを踏み続けてたら

こうして
前を走っているヤツだって
抜かしたりできるんだ!


「おい! 待てよ!」

「誰が待ってやるか〜♪」


「港はそっちの道じゃ
ないだろう!」


…あ。


「…おまえ本当に
ここの土地っ子なの?」

「……」


チョーシに乗りすぎた。


「みゅ〜みゅ〜♪」

呼ばれなれないその名前。

私達ふたりは
通りがかったクラスメイトの
自転車に取り囲まれる。


「みゅ〜みゅ〜ったら
紹介してよ〜」

「ほらウワサしてた
あのヒトでしょ?」

「お客さんとかいって
東京に置いてきた
彼氏なんじゃないの〜」


「…東京に置いてきた
彼氏?」

サトルがクラスメイトの
コトバに反応した。


「行こ!」

私は悟の袖を引っ張って
強引に走り出した。


「いいの?」

「何がッ!?」

「…友達なんでしょ?」

「友達なんていないわよッ」