「あ、ちょっと待って!
またブレーカー落ちると
ヤバいから
他の部屋の電気消して
コンセント
引っこ抜いてくる」
「…大丈夫だよ。
修理したとき
許容量おおきくしたから」
サトルはそう言うと
機材の電源を
手早く入れたと思ったら
いきなり大音量で
キーボードを叩きだした。
ひえええええええええ。
アーティストって
コレだからヤダ。
他のお客さんがいないし
おばーちゃんの耳が
遠いからいいけれど。
マンションでは
騒音被害なんて話
聞かなかったけど
防音してたのかな。
台所に行くと
おばーちゃんが
何やら探していて
「この子が煮干しを
食べたかってるから」
ってええええええ!!!!
その腕に
でっかいごろーまるを
抱いていて
「みゅ〜の部屋に
間違って
閉じ込められてたみたいで」
って。
おばーちゃん。
耳が遠いのに
そんなモンの存在に
気づくなよ!!
私はごろーまるを
取り上げる。
また閉じ込められると
察したのか
ごろーまるは
私の手から逃げ出して
「みゅ〜
アンタ血が出てるよ!」
おばーちゃんが叫ぶ。
廊下を
巨体を揺らしながら
走るごろーまる。
「おまえが走ってるトコなんて
初めてみたぞおおおお」
部屋の隅に追い立てて
座布団を被せて
格闘の末捕まえた。
気がつくと廊下に
点々と血の跡が着いてて。
「…ちょっとした
事件現場だよ」
使ってない部屋に
とりあえず拉致監禁する。
それでも
あんまり暴れるモノだから
「おまえは私といっしょに
暮らしたくないの?」
ちょっと切なくなった。