コーヒーを淹れて
サトルの部屋に運ぶ。

声をかけるのも
戸惑うくらい
集中してて。


「…綺麗なメロディー」

それは
ウットリするような
甘い旋律で

いろんな楽器の音が
加えられていって

どんどん骨太な
音楽になっていった。


テーブルの上には
たくさんの
走り書きした紙。


それは甘いあま〜い
コトバのオンパレードで。


気がつくと私は
音楽に合わせて
声を出して読み上げていた。


「おまえ、あらためて聞くと
いい声してんのな」


えッ。


ふつう
こういう場面って

「勝手に読んでるんじゃね〜」
とか言って

読まれた方が
赤面してるモンだと
思うんだけど。


何故だか
赤面してるのは
私の方で。

凄い悔しかった。


プロだから
自分の詩が読まれるのは
当たり前で


平気なんだろうか。


「ねえ、ちょっとコレ
歌ってみてくれない?」

「は?」


デモテープ作るのに
ボーカルの声が欲しいと
サトルは言った。

実際に歌う歌手のヒトが
イメージを
つかみやすくする為に

ボーカル入りの
お手本テープを作るのだと
説明してくれる。


「そんなの自分で
歌いなさいよ!」

「…俺の歌録りした
デモ聴いてみる?」


サトルは
ソレをおおきなスピーカーから
大音量で流し始めた。


「……」
「……」