…若くって
顔がよくって

音楽の才能がある。


神様はどうして
そこまでこのオトコに
優れたモノを
与えておいて

肝心のモノを
与えなかったのか…。


そうだよね。
歌手としての才能が
あったなら

業界のヒトだって
誰も放っておかないよね。


でも。


本人に自覚が
あるからといっても

こういう場合

どういうリアクションを
とったらいいモノか。


「ほら、画面に歌詞を
カラオケみたいに出すから」

キーボードの
ガイドにあわせて
歌ってみろと

私のリアクションを待たずに
曲を流し始めた。


画面を見ると

そこには
ごろ〜まるの
アニメーションが
音に合わせて動いていて。


「…本当に
大好きなんだね」

「俺のお守りだから」


サトルの画面を見つめる目が
優しくなる。


「…小学生のとき
親父が死んで

家族皆が塞ぎこんでいたときに
迷い込んできたネコで」


もう12年もいっしょに
暮らしているのだと
サトルはちいさく笑った。


東京に出てくるときに
家族に無理言って
強引にいっしょに
連れてきたのに

「オフクロやアニキに
何て言い訳したらいいか…」

家族にも顔向けが
出来ないなんて

そんな哀しげに
語られたら


…もう正直に
言うしかないって思った。


「あの…ッ!」

私が告白しようと
顔をあげた瞬間


「ごろごろぶにゃ〜あん♪」

私とサトルの間に
何かが飛び込んできて。


「マーガレットッ!!!」

サトルのヒザに
ごろ〜まるが乗っかった。


「あらあら、ごろちゃん。
そっちはダメよ」

おばーちゃんが
煮干しを片手に
ごろーまるを追って
部屋に入ってきた。


「…ごろちゃん?」

「あ、あのね、実はね!」

「うちの看板ネコ
ヒトなつっこくて
すみませんねえ」

おばーちゃんは
べらべらとひとりで
いらないコトばかり
話してる。


もうダメだ。

誤魔化しきれない!!!


サトルの私の見る
目の色が変わるのがわかった。