本当にこの村の情報網には
呆れてしまう。
いいヒト達なんだって
悪気はないって
わかってはいるけれど
私の神経を逆なでした。
「おまえのおかーさんも
心配して
昼休みにわざわざ
職場から飛んで戻ってきて」
本当に大丈夫かって
たくさんの筆談の跡。
「あのお客人から
事情を聴いて
やっと納得して
仕事場に帰っていって」
…おかーさん。
「港の皆からも
おまえの好きなタチウオが
届いてるから
お刺身にしようかね」
「…何で」
「皆、おまえに
元気だして欲しいんだよ」
「そんなコトして
私に媚びたって
何にもなんないのに」
可哀想なオンナノコに
同情して
「ああ自分ってなんて
いいヒトなんだって
自分に酔ってるのよね」
おばーちゃんは
耳が遠いから
聞こえてないのは
わかってた。
「元気出せ。元気出せ」
おばーちゃんが
私の背中をぽんぽん叩く。
ぽんぽん、ぽんぽん
叩く。
「…おばーちゃん」
ひねくれた私は
またひと泣きして
しまっていた。