仕事に集中したいって
言っていたサトルは

その宣言通り
ずっと宿から出るコトもなく
何日も過ごしている。


東京のマンションで
顔をあわせるコトが
なかったのも
納得できた。


お風呂や食事の時間に
手早く掃除をしたり
ふとんの上げ下ろしをして

できるだけ
邪魔にならないように
おばーちゃんと
協力した。


仕事に集中してるときの
サトルの真剣な横顔は
ちょっと色っぽい。


繊細な指が
髪をかき上げるしぐさ

ときどき遠くを見てる
その憂いある瞳とか


見とれてしまう
自分がいる。


ごろーまるが
サトルのヒザの上で
あくびをしてて。


…そこがおまえの
特等席だったんだね。


日が経つにつれ
サトルはまるで昔から
この宿の住人だったかのように
なっていて。


食堂でおばーちゃんと
身振り手振りを加えながら
今日もノリノリで
しゃべってる。


「おばーちゃんと
話してるときは
楽しそうだよね」

「楽しいよ」


「しぶ〜い声なんか
出してさ。

二枚目を
気取ってるワケ?」


なんて。


食堂からごろーまると
戻ってきたサトルに

イヤミをかましてしまった。