私がウソついてたコト
まだ許せずにいるって
わかってるけど

あの日以来
私とは必要最低限の
会話しかしていない。


「声はわざと
低めに出してるの」


老齢による難聴は

ちいさな音が
聞こえないんじゃなくて

ある一定の音域が
聴こえにくくなってるコトが
多いんだと言う。


「本来
キーの高いおまえの声って
おばーちゃんには
聞き取りにくいから」


おまえも声の出し方
気をつけた方がいいぞ、って。


…なんか
私が悪いみたいな
言い方で。


「ほら、その表情!

おばーちゃんは
おまえの顔色で
お前の言ってるコトを
判断しているトコロが
あるんだから

もっと明るい顔してろ!」


「…楽しくもないのに
そんな顔できないよ」


「何で?

マーガレットだって
こうしておまえの傍にいるし。

何が不服なんだよ」


「それが嫌なの!

皆して私のコト
可哀想だって
親切にして!!

同情なんてまっぴら
なんだから!!」


「…別に同情なんか
してないけど」


ここに留まっているのは
あくまで仕事の為で

私の為なんかじゃないって


サトルはキッパリ
言い切った。


それは

私に思いあがるなって

おまえなんか
眼中にないんだって


同情よりもキツイ
状況で。


胸が痛い。

この瞬間

私はサトルのコトが
好きなんだって

初めて自覚を強いられた。


「…同情なんてコトバ
軽々しく
悪い意味で使うなよ」