「そうなんですかあ」

私は笑って誤魔化した。


か、飼いネコだったんだ。


「もしかして
そのネコを探しに?」

「トラックに乗り込んだの
見たって
目撃者がいてね。

運送業者に問い合わせたら
確かに荷出ししてるときに
トラックから出てきたって」


…おしゃべりな
運送業者め。


「でもこの村の名前は
教えてくれたけど

引っ越ししたヒトの
名前も連絡先も
教えて貰えなかくて」

…当たり前だ。


「ポストにミナミダって
書いてあったんだけど
それらしき家
なかなかなくって」

…おとーさんの
名字だもん。


「みつかるまで
お世話になります」

って

王子さまみたいな
やさしい笑顔で。


良心がちくん、とした。


とりあえず
一番いい部屋に通して

お茶なんぞ出してみる。


窓から見える海の景色にも
溜息なんかを
ついたりして

本気でごろーまるのコトを
心配してるんだって
わかった。


「…学生さんですか?」

「いえ、社会人です」

「お仕事
よくお休み取れましたね」

「…仕事なんて…!」


「マーガレットは
僕のミューズなんです。

彼女がいないと
僕は何も手がつかない…!」


って。

「マーガレット???」

「ああ、このネコの名前です」

「彼女って…」

「メスですから」


どええええええええええ!!!


ごろーまる
メスだったんだあああ!

しかもマーガレット。

しかも僕のミューズって。


思わず大爆笑してしまう。


「何がおかしい」


王子さまの目が
マジだった。