玄関で呼び出しベルが鳴る。
飛び込みのお客さんが
2組もめずらしいなんて
思ってたら
外からたくさんの機材が
運ばれてきて。
それがどうやら
マーガレットの飼い主の
持ちモノで
持ってきたのは
レコード会社の
ディレクターだった。
チェックアウトのときに
レコード会社名で
領収書をって
名刺を渡されて。
そのとき初めて
マーガレットの飼い主が
ミュージシャンなんぞを
しているヒトだと知った。
夕食を配膳する為に
部屋を訪れると
そこはすっかり
スタジオのように
なっていて。
…長居しそうな
ヤな予感で
いっぱいになった。
部屋の中で
ディレクターが
かけているCDは
どれも有名な
メガヒット曲ばかりで。
「ここだけの話。
この曲全部
コイツが作ったの」
有名ミュージシャンの
ゴーストライターを
してるんだって
私をからかってくる。
「ほら、信じて貰えないだろ」
おまえにオーラが
なさすぎなんだよなんて
マーガレットの飼い主に
水を向ける。
飼い主は
ココロここにあらずって
カンジで
ディレクターを無視して
ケータイの画面を見つめては
溜息をついている。
…ごろーまるの
画像をみてるのかな。
「…ごろー。じゃない。
マーガレットさんを
探しにいかないんですか?」
「あーあ、無駄無駄!
あのぶちゃネコ
この時間は活動しないから」
ディレクターが
代わりに答える。
どうやら飼いネコだと
いうのは
本当のようで
ごろーまるの大好物の魚を
箸でつまみながら
その飼い主は
また溜息をついた。
「…ここら辺の漁師さんは皆
ネコ好きだから
しあわせに暮らしてるんじゃ
ないのかな」
なんて
フォローしたつもり
だったのだけど。
その目からみるみる
涙が溢れてきて。
「…マーガレットお」
そのままうな垂れて
固まってしまった…。