さっきまで
メソメソしてたくせに

こーゆーときだけ
しっかりして


何かヘンなヤツだ。


「ほら」

私の手を
ずうずうしく握って
廊下を歩きだす。

ゴッツい指輪が
指に当たって痛いよ。


コイツぜったい
彼女いないなって
直感した。


私が彼女だったら
手を繋ぐ度に
こんなに痛い目に逢うのは
ゴメンだもん。


「おばあちゃん!」

部屋を覗くと
おばあちゃんは
ふとんを被って
お経を唱えていて。


私の顔を見て
初めて安心したようで。


おばあちゃんに
ブレーカーの場所を
確認して

飼い主をブレーカーのある
玄関に連れていった。


「あちゃー。
焼き切れちゃってるよ」


私に工具を持ってくるように
エラソーに指示して

おばあちゃんの持っている
懐中電灯の灯りを頼りに
ブレーカーを分解し始めた。


「都会のオトコは
何でもできるんだねえ」


おばあちゃんは
感心しきりだったけど。


ブレーカーなんて
素人が分解したら
事故になるぞおおおおお。


「俺、工業高校でてるから」


って。

涼しい顔で修理してる。


停電になって
皆が大騒ぎしてたって
ゆ〜のに

自分の部屋に戻ると
一匹だけは
何ゴトもなかったように
爆睡していて。


呑気なモンだって
ちょっと笑ってしまった。


何があっても
このブチャ顔を見ているだけで
癒される。


でも

あの飼い主だって
おそらくは

同じ気持ちで。


私がこのコが
いなくなってしまう
毎日なんて
想像できないように


彼だって

同じ思いをしてるんだって
思ったら


申し訳ない気持ちで
いっぱいになった。