翌朝

朝食の準備ができたと
飼い主を起こしに行くと

すっかり
出かける準備ができていて。


食堂で
朝食を食べながら
おばあちゃんから
港の情報なんかを
訊いてるんだけど

肝心のおばあちゃんは
耳が遠くて
会話になってない。


「私でよければ
いっしょに探すけど。

今日は学校午前中で
終わるから」


思わぬ私の申し出に
飼い主の喜びようったら
なくって。


胸が痛んだ。


…本気でいっしょに
探すワケないじゃない。


本当は捜索の妨害を
する為だって

この飼い主は
夢にも思ってないだろう。


実は今朝も早くから
漁師さんに情報を貰いに
港にいってたなんて
知ったのは

学校でクラスメイトの
口からだった。


「凄いカッコイイヒト
泊まってるって
ゆ〜じゃないの!!」


教室では
あの飼い主の話題で
持ち切りで。


クラスメイトに
ネコを飼ってるとか
話してなくってよかった

なんて


教室で孤立気味の
自分の状態に
感謝したりして


何かまた
溜息をつく。


家に戻ったら

玄関で
スニーカーを履いて
飼い主が待っていた。


「ほら! 早く!」

「あ、ちょっと待って」

私はカバンから
ノートとサインペンを
取り出した。


「んなモン、どうするの?」

「ほら、地図とか書いて
貰うときに
便利かと思って」

「おまえ、アタマいいな〜」


って。

気がつくと
タメ口をききあっていて。


「さっき
おまえのオフクロさんに
遇ったけど

何か以前にも
遇ったコトがあるような
気がするんだよね」


ぎくッ。