レクイエム#001
「ただいま…」
学校から帰宅して
家のドアを開けると
ほのかにお香が薫ってきた。
「くん、くん」
何だろう。
実にお寺チックなこの香り。
…ママがまた妙なモノでも
貰ってきたのかな。
「ママ?!
こういうニオイ
セイが一番嫌うから…」
私は
リビングに声を掛ける。
「…あれッ?」
リビングのソファーに
青い中華帽をかぶった
チャイナ服姿のお客さま。
細い首。
まあるい背中。
その後ろ姿は
お年寄りみたいだけれど。
誰のお客さんなんだろう?
「…こんにちは?」
私は自分の部屋に
向かいながら
お客さんの横顔を…。
「…見えんッ」
客人は
私に背中を向けたまま
返事ひとつ発せずにいて。
お年寄りだから
耳が遠いのかな。
それとも
「私の日本語が
わからない…とか?」
「確かに
お前の破壊され尽くした
国語の能力と言ったら
マジ
目を覆いたくなるからな」
ってッ!
「セイッ!?」
私は自分の部屋のドアを開け
部屋の中にいたセイと
鉢合わせした。
「私の部屋でいったい
何をしていたのかなッ!?」