白目が黄色い老人が私の頬に
水で溶かした白い粉を
なすりつけッ
「一度、経験したら
もう手放せなくなるぞ…」
その辺の路地で
売られている安物とは
ワケが違うんだ、って。
「ちょっと、セイッ」
コレ
大丈夫なんですよねッ!?
「おぬしにも
ニューワールドを
見せてしんぜよう」
あれよ、あれよ、と
逆らう間も与えられず
客人の手によって
私の顔は真っ白に
塗りたくられるッ!
「…ゴマフアザラシに
また一歩近づいたな」
客人の行為に
セイがランランと
悪戯な目を輝かせた。
「あのですねッ!!」
「この粉にはたっぷり
リゾチームが
含まれているから
角質層が柔らかくなって
べっぴんさんになるぞお」
え?
「いや、失礼。
今でも充分
べっぴんさんだがな!」
客人がニッコリ笑う。
「…べっぴんさん?」
私に向けて
発せられるコトが
極めて珍しいこのフレーズと
覚えのあるこの笑顔。
「もしかして…」
このおじいちゃん
ケンちゃんの
誘拐事件のとき
ネットカフェの店員さんの
テルさんから紹介された
「怪しげな薬屋の…!」
「…それ以上
失礼なコトは言うなよな」
セイの刺すような視線が
飛んできた。