レクイエム#002


『え〜!、ウグイスの粉

それでトーコちゃんは
洗い落しちゃったの!?』

電話の向こうで
テツオさんが
勿体ナイ、を連呼している。


ウグイスもどきではなく
マジもんのウグイスの糞が

いかに貴重で高価で
しかも効能豊かなのか、は
よくわかりました。


わかりましたから。


「それで
あの薬屋のオーナーさんの
コトなんですけれど…」


テツオさんは
知ってるんですか?

知らないんですか?


『あら、あの薬局の
店主のオススメなら
安心して購入しても
大丈夫よ!

あそこの漢方薬
どれも品質が高いし〜』


「……」


恐ろしいまでのマイペース。


セイの学校の先輩なら
テツオさんの先輩でも
あるから

あのチャイナ服の
おじいちゃんのコトを

何か少しは
知っているかな、と期待して

勇気を出して

テツオさんに
電話を掛けてみたけれど。


『強壮に効く薬とか
もうアタシ達の業界では
有名でねッ』


…電話、そろそろ
切った方がいいかな。