テツオさん
あの薬店のコトは
知っているみたいだけれど
それはあくまで
お店のヒトとお客のカンケイで
あのおじいちゃんが
自分の先輩だとは
知らないのかなあ。
『もっともッ
セイくんなんか
疲れ知らずの
果て知らずだから
強壮剤なんかカンケイない
だろうけどねッ』
「……」
気になる
セイと薬屋の店主の情報は
何ひとつ得られぬまま
「ありがとうございました」
自分から掛けた電話を
切ろうとしたら
『あ、そうだ!
トーコちゃんてさ
太極拳に興味ない?』
突然の話題変換ッ。
嫌な予感しかしないから
ここは
「ないです」
クールに電話を
終えようとした私に
『つきあってくれたら
お小遣い
はずんじゃうけどなッ』
悪魔のささやきッ。
「お小遣い…?」
『参加してみたいんだけど
高齢者ばっかでね〜』
目立ちたくないから
平均年齢を下げたい、と
テツオさんの
窮状を訴える声のトーンは
切実で。
…嫌な予感がした。