「…気配を消したり
しないでくれるかなッ」
「フン」
セイは私に
自分の手についた水滴を
軽く飛ばすと
背中を向けて
「母さん、俺、ちょっと
ひと眠りするから」
自分の部屋へと踵を返す。
「もうすぐ
晩ゴハン出来るわよ」
「悪い、もう限界…」
あのセイが
ママを後回しにして
睡眠を優先させるなんて。
「……」
あまりの意外さに
私はセイに
仕返しするタイミングを
逸してしまった。
「…セイ。
また研究室の仕事が
忙しいのかな」
「そうかもしれないわねえ。
トーコが
学校に行ってるときも
ここ1週間くらい
ほとんど家にいないから」
ママが冷凍食品をひとり分
袋に戻した。
「…そうなんだ」
寝不足のセイも
寝起きのセイも
機嫌が悪いから
テツオさんのコト
ますます耳に入れるワケには
いかなくなったじゃない。
「仕方ない」