レクイエム#003
「ヤル気を出してくれて
俺は本当に嬉しいぞ」
朝も早くから
何も知らないシンスケが
私のランニングに
つき合ってくれている。
「いつも
ランニングは退屈だ、って
スグに根を上げていた
トーコがなあ」
「……」
私だって
好きで走り続けている
ワケではない。
さっきから
テツオさんが指定していた
公園を
何往復もしているのだが
テツオさんの姿どころか
太極拳の参加者らしい
集まりもなく…。
「この辺りで
太極拳ができそうな
おおきな公園って
他にないよね…」
「あ〜?
太極拳が何だって?」
シンスケのでっかい声が
鈍い色をした冬の空に
響いた。
…帰っちゃおうかなッ。
《公園に来ていますけど
姿が見当たらないので
このまま帰ります》
公園にある時計の写真を
撮って
テツオさんのケータイに
送信する。
「おい、トーコ!
何やってるんだよ」
私の前を走っていた
シンスケが
振り返って
こっちを見ていて。
「あ、うん。ごめんッ」
ケータイを
ジャージのポケットに
突っ込みながら
私はシンスケの元へと
駆け出した。
「…もしかして
セイと連絡取ってたとか?」
「えッ」
「違うのか?」
「あ、ううん。
公園の写真撮ってただけッ」
「写真?」
私の怪しげな行動に
シンスケの眉間に
シワが寄るッ。