レクイエム#004


早朝のオフィス街。


物々しい空気を
漂わせながら

オトコ達が少しずつ
私達との距離を詰めてくる。


黒のアーミージャケットの
集団。


みんなして
カーキのパーカーのフードを
被っていて

黒いゴーグル。


なのに

いわゆる不良とかという
カテゴリーに
当てはめられずにいるのは

胸につけられた
上品なカーキの鳥の羽根の
せいなのか。


「…トーコッ」

ジロジロ
見てるんじゃない、って

シンスケが
小声で耳打ちしながら

私のアタマを押さえつけた。


「……」

黒のカーゴに
ごっつい黒の軍靴。


まあるい汚れが
飛び散っている。


「何かトラブルでも?」

「あ、いえ。
何でもないです」


シンスケが
黒い団体の質疑に
丁寧に答えているけれど。


「あんなに
おおきな声を出して
騒いでおいて

何でもない、は
ないだろう?」


ピシャンッ!

私のアタマの上で
何かを叩く音がして

「痛ッ」

私のアタマを
押さえつけていた
シンスケの手が離れた。


「シンスケッ!?」

顔を上げた私の視界に
入ってきた
シンスケの手の甲の
赤い腫れ!


「3人とも
ここらで見掛けない顔だな」

オトコのひとりが

手にしていた黒い扇を
開いては閉じながら

私を見ている。


…シンスケはあの扇で
叩かれたんだろうか。


当たったら痛そうな
見るからに堅そうな
シャープな扇。

「ごくごっくんッ」

その緊張感に
私も思わず息を呑んだ。