「テツオさんって
名字なんだ〜。

ほらッ

ヒラオさんとか
マツオさんとか
ニシオさんとかッ」


「……」
「……」

シンスケの眉間に
シワが寄りッ。


「テツオさんって
どんな字を書くんですか?」

ってッ!

そんなトコまで
ツッコんでくるんですかッ。


「オンナにそんなコト
言わせないでッ」

テツオさんが
スクーターのエンジンを掛け

「え、あ、おいッ!」

ブロロロロオオオオオ!

シンスケの声を
かき消すように

ふたり、スクーターで
その場を立ち去るッ。


「…ごめんッ。シンスケ」

ココロの中で
何度も何度も手を合わせ

「テツオさんに
バイト料ハズんで貰ったら

シンスケに
ボック☆のハンバーガー
好きなだけ
オゴってあげるからねッ」


走るスクーターの上から
私はそっと後ろを振り返り

シンスケのいるハズの
歩道橋の様子を窺った。


だけど

「あれ?」

シンスケの姿は
そこになく…。


「あちゃ〜」

シンスケってば
怒って
走り去っちゃったのかな。


「…ボック☆じゃ
済まないかもしれないぞ」


仕方ないッ。


「セイのお宝写真とかッ
持ち出すしかないかッ」


なんて

のどかなコトを
考えていた私は

本当に危機意識の薄い
赤点バカで。


あの場所にシンスケをひとり
置き去りにしたばかりに

まさか大変なトラブルに
巻き込まれて
しまうなんて…。


妖しい鳥のさえずりが

セイの過去への扉を
今、押し開けようとしていた。





月夜に啼く春鶯
〜ツキヨニナクトリ

レクイエム#004

≪〜完〜≫


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