「たいした
運動量でもないのにな」
周りを見渡してみると
私と同じく
額に汗が滲んでいるヒトが
大勢いる。
「……」
音楽が終わる頃には
私はたくさん
汗をかいていて。
音楽の終わりが
解散の合図になっていたのか
同じ動きをしていた人間達が
バラバラに散り出した。
みんなの顔に
充実感いっぱいの
笑顔、笑顔…。
さっきまでの静けさが
ガヤガヤと賑やかな
空間へと変わってゆく。
「トーコちゃん
お疲れさまッ」
テツオさんが私に
タオルを差し出した。
「さっすがトーコちゃん!
ベテランの一角に混じっても
見劣りしなかったわよ〜」
「……」
ビジュアル的にも
違和感なく
馴染んでしまっているで
あろう
自分の姿を想像して
ちょっと哀しい。
「ねえ、ねえ、ねえ。
向こうに
気づかれないように
そっと
確認して欲しいんだけどお」
「え?」
テツオさんの言う方向に
タオルで汗を拭いている
フリをして
視線を盗むと
「白い移動販売の
ワゴン車が
お店を始めたでしょ〜」
「……」
私達がココに来たときは
何もなかった広場に
次々と車が入ってきていた。
「…車体に
鳥と梅の絵が描いてある
ヤツですか?」
「そうッ!
一番美味しそうな
お兄さんがいる車ッ!」
「……」
「違うッ!
一番美味しそうなメニューが
並んでいる車ッ!」
…テツオさんッ
今更、そういう
誤魔化しはナシですぜッ。