「いいのよッ。
このタイミングでッ」
1週間も通い続けて
充分、研究し尽くしたん
だからッ、ってッ。
「1週間もッ
何やってたんですかッ」
「しッ!
トーコちゃんってば
声がおおきいッ」
「……」
恋するオンナ、いや
オトコは凄過ぎです。
しっかし
「いい匂い…」
何だかお腹が減ってきた。
「中華がゆに汁そばに
チャーシューまんかあ」
どれも
美味しそうだなあ。
お客さん達も湯気の向こう
いい笑顔だ。
「テツオさんッ
私、3つとも
頼んでいいですかッ」
「ちょっとッ
間違っても
アタシのコトを彼の前で
“テツオさん”なんて
呼ばないでねッ」
「……」
「いいコトッ!?
アタシのコトは
“お姉さま”と呼ぶのよッ」
「……」
“お姉さま”
私の口から
そんなセリフが出て
笑われはしませんか。
私が思いっきり
戸惑っていると
「今、並ばれている
お客さん。
申し訳ないけれど
これで最後です」
ワゴンの方から
声が聴こえてきて。
私達より10人以上も
先のお客さん達が
「あ〜ん、残念ッ」
しぶしぶと帰っていく。
あ〜あ。
だからもっと早くに
並ぶべきだったのに。
テツオさんの
1週間に及ぶ観察は
いったい
何だったのかッ。
「ほらッ!
トーコちゃんッ
出番よッ!」
「えッ」
私は顔面にタオルを
押し当てられッ
突然、テツオさんに
ワゴン車の前に
連れ出された。