「スミマセンッ。
アタシの妹がッ
ここの汁そば
食べれないなら
今日は
学校に行かない、って
泣くんですッ」
はい!?
「そのお鍋の中に入った
スープだけでも
この子に
舐めさせて戴けませんかッ」
何ですかッ
その恥ずかし過ぎる
設定はッ!!!
「あはははは」
ほらッ
アジアンビューティーも
笑って…。
「……」
アジアンビューティーが
笑ってるッ!????
「やっと声を掛けて
くれましたね。
お嬢さん」
「えッ」
アジアンビューティーな彼に
“お嬢さん”と呼ばれて
テツオさんがイッキに
舞い上がる。
「だだだだだだだって
アタシのコトッ!?」
「毎日、あの木陰から
ピンクのスクーターに乗って
こっちを見ていたでしょ?
いつ買いに来てくれるのかと
実はずっと気になっててね」
「……」
アニメの
少年主人公みたいな声。
しゃべると
いっそう
夢の中のヒトみたい。
「汁そばはナイんですが
列に並んだのを
見掛けたんで
一応
チャーシューまんだけ
取り置きして
おきましたから」
なんて
テツオさんの意中のヒトは
黒い紙に包んだ
チャーシューまんを
そっと私達に差し出した。