「……」
長い指。
手の甲におおきな絆創膏。
クールそうに見えて
意外とドジだったり
するのかな。
「チャーシューまん。
ウチの自慢なんだ」
「……」
ぱっくり割れた
皮の中から覗く
チャーシューの色が
実に食欲をそそってる。
「アッアタシはッ
ずっとこの店を
見てたんじゃなくてッ
この妹が太極拳を
やってみたいって
ウルサイからッ
姉としてどんなモノなのか
ちゃんと観察して
おきたかっただけでッ」
テツオさんは必死で
言い訳を並べているけれど。
百戦錬磨の
モテるオトコには
そういうのって
きっとお見通しなんだと
思う。
「…美味しい」
「でしょ!?」
「!!!!」
テツオさんの言い訳よりも
いいオトコの興味は
自分の作品への
評価だったりして。
「ちょっとッ
トーコちゃんッ」
私はテツオさんに
アジアンビューティーから
引き離され
腰を抱えられるようにして
ピンクのスクーターまで
引きずられていった。
「アタシが先に目をつけて
たんだからねッ!
ちゃんと
協力してくれなかったから
バイト料はナシだからッ」
ええええええええッッ!!
「そッ、そんなのッ」
アリなんですかッ。
「トーコちゃんなんて
もう知らないんだからッ」