レクイエム#006
「あいあいあいあいッ
逢引きってッッ!!!」
思わぬ場所でセイに遭遇し
その冷やかな眼差しに
動揺したッ。
「オンナってのは
働くオトナの制服姿に
弱いからな」
「……」
「料理人ねえ。
食欲ってのは
性欲と深くつながりが
あるって
言われてるけど」
言い訳を
思いつかずにいる私に
セイが
追い打ちを掛けてくる。
「今のヒトはッ
落し物を
私に届けてくれただけでッ」
私が手に持っていた
証拠のタオルを
セイにかざすと
「それ、誰のタオルだ?」
「えッ」
「ウチにそんな悪趣味な
ブランドタオル
あったっけ?」
セイの目が
さらに厳しくなった。
「そのネコの刺繍。
有名なゴルフウェアの
ブランド・キャラクター
だよな?」
セイが私から
タオルを取り上げて
「…オヤジ臭がするぞ」
なんてッ
冗談でも
テツオさんの前でそんなコト
口が裂けても
言わないでくださいねッ。
「セイこそッ!
どうしてこんな時間に
こんな場所にいるんだかッ」
「テルさんに
ちょっとデータをね」
セイが自分の背後
遠くに見える
ネットカフェの看板を
指さした。
「…テルさん」