「まっすぐ家に帰って
学校に遅刻するなよ」


私をタクシーに押し込め
セイが一万円札を
私に握らせると

バタムッ!

「あッ」

植え込みの中の
ピンクのタオルと

セイを残して

私を乗せたタクシーが
走り出す。


「お客さん
運がよかったね。

この時間帯で
ここいらを走ってる
タクシーなんて

ほんと稀だから」


タクシーの中
後ろを振り返ると

「え」

セイの傍に現れた

「オンナの…ヒト?」


スカートに
片方にまとめたロングヘア

確認できるのは
それくらいで

後は逆光になっていて
よくわからないけれど…。


そのシルエットに
セイの方から
近づいたかと思ったら

「え」

二つのシルエットが
重なり合った…?


「……」


ちょっと。


ちょっとッ

もしもしもしッッ!!!


「スーパーが
どうのこうのとかッ

テルさんの名前を
出したりしてッ」


さも
研究室の仕事のような錯覚を
私にさせてッ!!!

「何か変だと思ったッ!!」