あのセイが私への追及を
中途半端なまま終えるなんて

今思えば

やはり、確かに
不自然すぎる行動でッ!


「私の浮気を疑える
立場じゃないじゃないッ」


…セイの
こ〜ゆ〜怪しげなバイトは

今に始まったコトじゃ
ないけれど。


「やっぱり
すんごい腹が立つッ!」


手の中の一万円札。


「…ごっくんッ」

金欠病と言う名の長患いの
特効薬ッ。


「このお金があれば
シンスケにも
ご馳走してあげられる」


このまま素直に
家に帰って
知らん顔してやれば

後ろめたさ満載のセイの
心理から言ってもッ

たぶんッ、おそらく
お釣りは全額、私のモノッ。


天下泰平!

ばん万歳ッ!!!


…だけど。


「……」

だけどッ!!!!!


ここは
しっかり現場を押さえてッ

セイのバカぼ目を
覚まさせてやらなくてはッ!


「スミマセン!

やっぱり
ここで降ろしてくださいッ」


私は持っていた一万円札を
運転手さんに差し出した。


のにッ!


「やめておいた方がいい。

この辺は何だかんだ言って
治安がよくないからね。

オンナノコのひとり歩きは
危ないよ」

おおきなお世話な
運転手さんが

私の希望を無視して
ハンドルを右に切った。


「治安が悪いってッ」

こんな爽やかな街なのにッ。