レクイエム#007
タクシーの中
ツルツル坊主頭のシンスケを
保護したのはいいけれど。
「……」
「……」
「……」
重苦しい空気。
あれ程、饒舌だった
タクシーの運転手さんの
口も閉じられたまま
「……」
身を固くして
タクシーの後部座席で
丸くなっているシンスケに
掛けるコトバが
見つからない。
自慢の
短めのソフトリーゼント
みんなにダサイと
言われながらも
高校に入ってから
ずっと貫き通してきた
お気に入りの髪型
だったのに
それが
こんな無残な姿に
されようとは…。
私はシンスケの
ピカピカのアタマを
チラ見した。
「……」
中学生や
高校球児の丸刈りとは
ワケが違う。
バリカンやハサミで刈った
アタマではなく
カミソリで剃毛した
修行僧のような状態で。
「……」
あのとき、あの場所に
シンスケを置き去りに
してしまったコトを
後悔しても
仕方のないコトだったけど
「…ごめん、シンスケ」
「何、謝ってるんだよ。
別にお前のせいじゃないし」
シンスケの精一杯の強がりに
胸が痛んだ。
「……」
「……」
「……」
…どうしよう。